進む マンション管理会社の働き方改革

管理会社

管理組合にも理解を求める従業員の健全な業務遂行
連続休暇や時差出勤、ICTによる効率化など手法さまざま

 労働集約型の産業と言われるマンション管理業界。少子高齢化や企業の定年延長などによる人材確保の難しさに加え、管理組合からの要望はより高くなる傾向にある。マンション管理会社各社は従業員の働き方改革や業務効率化にどのように取り組み、生産性の向上を目指していくのか。各社の取り組みから管理業界の未来を探ってみたい。

 働き方改革への取り組みをネットで公開

  三井不動産レジデンシャルサービスは、2017年8月に働き方改革への取り組みをホームページで公開した。管理組合に対しても同社が目指す働き方改革に理解と協力を求める姿勢を打ち出している。
 同社は2013年のノー残業デーの導入を出発点に、2015年には就業環境改善委員会や健康経営推進委員会の設置やダイバーシティ推進課の新設を行い、時差出勤やパソコンのシャットダウンシステムも導入した。2016年には健康経営宣言をし、在宅勤務制度や「モバワク」の導入のほか、「変える帰るプロジェクト」の始動、健康相談室の設置を実施した結果、2014年度から2016年度の間に平均残業時間を32%削減した。
 勤務時間の取り組みとしては、コアタイムを10時から15時とし、その前後8時から19時の間で1日の始業・就業の時刻を社員個人が決められるというフレックスタイム制のほか、複数パターンから社員が自由に出退勤時間を選択できる時差出勤制度を採り入れ、半日有給との組み合わせもできるようにした。また、翌日の仕事やプライベートの予定に合わせて出勤日と休日の勤務計画を社員自身が決めるというセルフ勤務計画も導入し、働き方の多様化を進めている。
 一方、オフィスワークの形態も変えた。フリーアドレス制のほか、自宅から近い支店で勤務できる「モバワク」制度により、社員同士のコミュニケーションの活性化や仕事の見える化にも取り組んでいる。
 こうした取り組みの詳細を、社員の声と共にホームページで紹介している。「当社管理マンションのお客様へ」と題した項目を設け、従来は「個人対応」になりがちであった業務体制を「組織対応」へと移行するため、各種マンションデータを整備し、24時間365日対応可能なコールセンターを備えていることに言及し、担当者の不在に関わらず対応する組織体制を構築している旨を書き添えた。
 さらに、どういう種類の案件をコールセンターに問い合わせればいいのかをホームページに記載。たとえば断水や火災・停電といった緊急時の電話連絡は、コールセンターのオペレーターが受けた後、状況に応じて担当者に出勤を要請する。一方、「明日の理事会に出られなくなった」というようなマンション管理についての連絡、住戸内の設備やマンション生活に関する問い合わせ、マンション管理のルールについての質問などはコールセンターのオペレーターが受けることを、事例を挙げて記載してある。
 フリーアドレスの導入について高松茂社長は「マンション管理業では、協力体制ができていればお客様を待たせることなく、いろいろなことができる。今まではそこがうまくできていなかったので、昨年7月に本社を豊洲に移転したのを機に部門間の垣根を取り払ってフリーアドレスを導入した。日常的に他部門とのコミュニケーションがとれるようになり、他の部署はどんな仕事ぶりなのか、雰囲気を味わうことができるようになった。それによって社内の理解が深まり、自然に交流も起きている。ただ実際にフリーアドレスを運用してみると、ミックスはされているものの同じ部門同士でかたまる傾向がある。社外に公開している電話は固定電話だが、ブロックごとに電話の各基地がある。例えば湾岸支店の固定電話はこのブロックにあるというように。そうすると湾岸支店のメンバーは何となくその周辺に集まる。そこで固定電話の位置を数カ月に一回シャッフルしている。首都圏に13拠点・15支店あるが、本社以外はまだ3拠点・4支店でしかフリーアドレスを導入していないので、今後は順次広げていく」と話す。

 時差出勤への取り組みは大京アステージも朝7時から13時の間で始業時間を社員が分単位で決められる形で導入しているように、各社でも取り組み事例が出始めている。また。連続休暇の実施についても、大京アステージは年休5日間の必須取得のほか、「プラチナウイーク」として休日をつなげて最大9日間の長期休暇が取れるようにし、社員に推奨している。有給休暇の細分化には三菱地所コミュニティが今年から運用を開始する計画。休日の自由な設定や連続休暇取得の動きが今後、業界にも浸透しそうだ。

AIやICTを使った効率化
資料やノウハウを整理

 大和ライフネクストは、社内の事例・知識共有サイト「ガリレオ」を更新し、昨年6月にIBM Watoson日本語版を活用したシステムと連携させた。AIを使って必要なデータが検索しやすいよう学習機能を高めたシステムで、利用するほどWatsonが成長する仕組みだ。マンション管理業界はまだ紙ベースの資料が多く、電子データとして蓄積されていない情報も残っている。すでにある電子データの整理とまだ蓄積されていない情報とあわせて、AIの活用により業務の効率化をはかることは従業員の働き方や管理会社の組織を変えていくひとつの処方箋になる。
 修繕施工会社においてはICTを活用した施工管理業務の電子化が効果をあげている。大京穴吹建設は、昨年10月から帳票やワークフローを一元管理できる施工品質管理システム「D―SHIP」の運用を始めた。従来、施工管理は書面記録やメール、電話でのやりとりで行っていたが、現場の状況をリアルタイムで把握できない、あるいは書類作成や現場写真の整理という作業負担が膨大という課題があった。それらは残業が発生する要因にもなっており、作業の効率化が喫緊の課題となっていた。工事に関係する協力会社は外壁補修会社や塗装会社など、1物件当たり10社以上にもなり、各社とのデータの共有、現場の把握などのやり取りが煩雑で時間がかかることから、工事業務そのものにも影響を与えていたが、ICTの活用により改善されつつある。
リフォーム会社でもICTの活用で業務を効率化する動きがある。リフォーム後の室内のCG画像をVR(仮想現実)で確認できるサービスを導入した大京リフォーム・デザインは、導入によって従来は1カ月半ほどかかっていた顧客との商談を2週間に短縮できると話している。
 
育児や介護を抱える社員も含め、働きやすさを追求

 業務の効率化と共に近年の流れとして、出産や育児、介護などの事情を抱える社員が会社を辞めることなく、キャリアを積んでいけるように人事制度や福利厚生面での充実をアピールするようになった管理会社が増えている。働きやすい職場になるようトップ自らが目標や取り組み内容を定め、改革宣言をする会社も少なくない。2016年4月から施行された女性活躍推進法を意識した取り組みであると同時に、新卒者を含めた人材確保のためにも会社や社員の意識改革が必要になってきたと言える。 
 東急コミュニティーは2016年11月に女性活躍推進法に基づく優良企業として厚生労働大臣から「えるぼし」の最高評価の認定を取得した。同認定は、採用、継続就業、労働時間等の働き方、管理職率、多様なキャリアコースという5つの女性就業に関する基準から企業を評価するもので、同社は5つの基準を満たし、3段階で最高評価を取得した。マンション管理会社では初めての認定取得だ。同社は東京都が働き方改革の気運を高めていくために呼びかけている「TOKYO働き方改革宣言企業」に名乗りをあげ、働き方や休み方の改善について目標などを定めて全社的に取り組んでいる。
 出産により長期休暇の取得を余儀なくされる女性社員だけでなく、会社という組織にはさまざまな事情を抱えた社員が働いている。育児だけでなく、介護やその他特別な事由がある社員を対象に同社は2016年5月から在宅勤務制度を開始したが、同年11月には事由を問わずに在宅勤務制度をつかえるように仕組みを変えた。
育児や介護などの事情から就業を継続できなかった社員を対象に再入社制度を設けている管理会社も増えつつあることも注目したい。

組織や役職を超えた
コミュニケ―ション

 制度の充実もさることながら、最も大事になってくるのは社内のコミュニケーションである。管理業界のM&Aが盛んに行われたこともあり、異なる企業文化で育った社員同士が共に仕事をする機会も増えた。「お互いの顔が見える」「困っている社員に声がかけられる」雰囲気を醸成するために、社内イベントが活発になりつつある。
 三菱地所コミュニティは2016年度から自由参加で「コミュニティフェスタ」という社内交流イベントを東京と大阪で開催し、すでに4回を数える。伊藤忠アーバンコミュニティも役員が社員へ日頃の感謝の気持ちを伝えることを目的とした社内イベント「ありがとうの夕べ」を2013年から実施してきた。加えて昨年は女性社員向けにワークライフバランスや心と体のメンテナンス法を指南する社内研修も実施した。役職や部署の垣根を越えた交流を通して社員の声に耳を傾けようとする企業の姿が見られた。

タイトルとURLをコピーしました