管理不全マンション対策に東京都が本腰 検討会設置し、条例化見据える 23区も条例制定、コミュニティ形成の契機にも

政策動向

 建物の老朽化と居住者の高齢化が進み、財源や役員の不足により適正な管理が行われない管理不全マンションの増加が懸念されている。外壁の落下などによる周辺地域への安全性の低下や治安の悪化など周辺への影響も大きいとみて、東京都が対策に本腰を入れ始めた。行政が関与する形でマンションを適正な管理に導き、マンションと周辺市街地の環境を良好に保つべく、事前に予防する施策を探る予定だ。危機意識は23区の中でも高まっており、独自策の展開も始まりつつある。

管理状況の報告義務付けへ

11月に最終とりまとめを作成

 東京都は、管理不全マンションの発生を抑制するため、管理状況を行政で把握する体制整備について検討に乗り出す。3月29日に「マンションの適正管理促進に関する検討会」を立ち上げ、把握に向けた方法や管理の状態を判断するための考え方などについて議論を開始した。今後5回程度会合を重ね、11月にも最終とりまとめを作成する予定。管理不全マンションが増加すると居住環境の悪化だけでなく周辺の生活環境への影響も大きいとみて、管理する体制を整備したい考えだ。

 都では居住者の高齢化などで管理体制が整わないマンションが今後増えると予測し、その状態が続くと、マンションの居住環境だけでなく周辺地域の防災や治安などへの悪影響にもつながると懸念。こうした事態を避けるため、行政が積極的に関与して管理状況を把握し、適正な管理につなげる制度を検討する。検討会には、マンション管理業協会の鈴木良宜事務局長や日本住宅管理組合協議会の川上湛永会長のほか、学識者や弁護士、民間事業者などが参加、座長には横浜市立大学の齊藤広子教授が就いた。

 初会合で示された制度化に向けたイメージでは、管理組合に関する明確な規定がなかった1983年以前の区分所有法のもとで建てられたマンションに管理状況の報告を義務付け、管理の状況に応じて助言や支援を進める形を想定した。報告を求める内容は管理不全の兆候を判断できるものとし、支援しても改善がみられない場合に立入検査の実施もイメージする。東京都内の分譲マンションは約5万3000棟あり、このうち1983年以前に建設されたマンションは約1万5000棟に上る。

 今後は、報告内容や支援策に関する具体的な項目や、報告を求める頻度、報告に協力しない場合の罰則規定の有無などを論点とし、制度化に向けて落とし込む。初会合では、管理不全やその兆候を判断する上での定義や、行政の関与する方法などについて議論した。都では管理不全の定義について「維持・管理や修繕が適切に行われず、周辺にも悪影響を与えている状態」とし、維持・管理や修繕が適切に行われていない状態を管理不全の兆候があると位置付けた。会合では、管理不全の兆候を判断する事項として、管理組合や管理規約、総会の開催、管理費の収集、修繕積立金、大規模修繕工事の実施のうち、いずれかがない状態とすることを提示した。

 検討会を所管する都市整備局住宅政策推進部マンション課の飯塚睦樹課長は、検討会を通じて「今後は条例化も含めて検討を進めていきたい」と話す。報告の義務化について「すでに支援メニューは整備してきているので、管理状況を把握し、きめ細かな対応ができるようにしたい」との狙いだ。「報告により、マンションの運営状況が適切か把握することは管理不全を予防する上でも重要だ。啓発に向け区・市との連携もこれまで以上に深めたい」と見据えている。

墨田区、町会との連携を模索

千代田区はライフステージに応じた支援策を検討

 東京都に先駆け、23区の自治体では豊島、墨田、板橋の3区がマンションの管理状況に関する届出を義務化する条例を制定している。いずれの区も、管理規約や総会議事録、名簿などの作成・保管状況、長期修繕計画の作成状況などについて届出を求めている。板橋区は7月に条例を施行する。

豊島区は2013年7月から「豊島区マンション管理推進条例」を施行し、間もなく5年を迎える。届出率は初年度の52・4%から、今年3月末時点で67・8%まで上昇。地元のマンション管理士や建築士、税理士などで構成する支援チームで条例や支援策をPRし、制度の普及に努めてきた。「耐震化や修繕工事に関する助成についてアドバイスして制度を周知してきたが、今後は未届けのマンションへのアプローチについて方法を検討したい」(住宅課)と届出の回収を強化する。また、今年度は住宅マスタープラン改訂のタイミングにも当たるため、改訂の中でもマンション管理に関する強化策を打ち出す。マスタープランに対応した施策を来年度以降展開する方針だ。

 昨年4月に「分譲マンションの適正管理に関する条例」を施行した墨田区は「初年度は条例の周知に費やした1年」(住宅課)と土台固めを強調する。1年を終えたところの届出率は約4割。順調に進んでいると区はみているが「提出のないマンションこそ問題を抱えているケースが多いだろう」ともみており、今年度も届出書の提出を促す。改めて届出書を郵送した上で回答状況をみながら訪問により提出を促していく考えだ。

 その中でひとつのカギとみるのが、町会との連携だ。管理不全が見受けられるマンションがある場合に町会からもアプローチしてもらい、条例の周知などを協力してもらう考え。今後、同区の全体町会長会議を通じて協力を要請する予定でいる。同区では「マンションの中には、届出書類が届いてもどう対応していいかわからないというケースもあると思われる。町会が働き掛けることで届出への対応方法や支援制度の内容がわかるだけでなく、マンションとその地元の町会とのつながりもできる。コミュニティ形成の上でも効果があるのではないか」と一石二鳥の効果を狙う。

 一方、千代田区は今年度にマンション管理適正化に関する条例の制定に取り組む。約600棟あるマンションに区民の9割が暮らす同区にとって、マンションの適正管理は居住環境や周辺の市街地環境を保つ上でも重要とみて、条例の制定により実態の把握や管理不全の予防を促す。学識者や業界関係者などを交えた検討委員会を立ち上げて議論し、年度内の議会への上程を目指す。また、高経年化したマンションも増えており、マンションの計画段階から大規模改修期、建替えに至るまでのライフステージごとの管理の在り方や支援策についても検討する。集中的な調査を実施してニーズを洗い出し、経年の時期に応じた新たな支援策を検討していく。検討状況によっては、条例で計画段階から適正な管理を促す方法を示すことも視野にある。

情報収集が新たな施策のカギ

独自性ある施策の検討も

 いずれの区でも、情報が集まれば新たな施策展開につながるとみて、いかに実態を把握するかを重要視する。「届出が増えると統計的な分析ができるので、回収を強化し、結果を踏まえて新たな展開を見据えたい」(墨田区)との声もある。東京都が管理状況の報告を義務付ければ各区の条例と重なる部分もでるため、独自性のある取り組みを模索する自治体の動きも今後強まりそうだ。

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