東京都・飯塚マンション課長にマンション管理条で聞く 組合のサポートに管理士の職能拡大を期待 届出制度と市場価値向上のリンクも検討

コラム/インタビュー

東京都の「東京におけるマンションの適正な管理の促進に関する条約」が東京都議会で可決・成立し施行された。居住者の高齢化とともに高経年マンションが積み上がり、管理不全や周辺環境の悪化が懸念される中で、条例の果たす社会的な役割が注目される。条例の運用に向けた指針の策定や、2020年4月から管理組合に管理状況の届出を要請するのを前に、東京都の飯塚睦樹・住宅政策本部住宅企画部マンション課長に周知に向けた取り組みや関係主体との連携について聞いた。

――条例の施行を受け、都の今後の取り組みは。
条例の狙いは、管理主体である管理組合に行政が積極的に関わることで、管理不全の予防と適正な管理を促進し、良質なマンションストックや周辺居住環境の形成につなげることにある。その実現に向け、施策を推進するための総合計画を策定するほか、行政として管理に関与する上での指針づくり、マンションの管理状況を記録するためのデータベース作成に取り組む。
総合計画は、2016年にマンション施策に関する基本方針などを定めた「良質なマンションストックの形成促進計画」を土台に、建替えや耐震化に関する情報をアップデートしながら策定する。指針は、管理組合や、マンション管理に関わる主体が取り組むべきことをまとめた「マンション管理ガイドライン」を改める。特に管理状況届出制度を始めるため、制度の趣旨や実施による効果などの説明を厚くし、理解を求める。関与に当たっての行動規範としても位置付け、都としての考え方や対応方針、管理組合がないマンションに組合設立を働き掛けていく上での方針などを示したい。
データベースは、管理組合に管理状況を届け出てもらう際の作業を容易にする意味合いだけでなく、管理組合が自らの管理状況を閲覧したり、市区町村が所管するエリアの状況を確認できるようにする。匿名性を持たせた上でデータを統計化することも検討する。それによりマンション管理の課題や傾向を浮かび上がらせるほか、都の行政施策に生かしたり、他府県や民間事業者の参考としてもらえるようにしたい。入力項目はなるべく絞り、届け出る側には届出しやすく、かつ行政も管理状況を容易に把握して助言や支援をしやすくする。

――管理状況届出制度では、特に自主管理マンションへの周知が課題だ。どう対応していくのか。
管理組合が組成されていなくとも、実質的な管理者がいるというケースは多い。そうした方にアプローチしながら届出をお願いするとともに、区分所有法に基づく管理組合の必要性を認識してもらう。懸念しているのは、そうした人がいて現状は運営が機能しているが、不在になったときに突然管理不全となることだ。条例によりそうした可能性のあるマンションを抽出できるようにし、管理組合を設置して将来的に管理不全に陥らないように働き掛けていくのがポイントになる。
また、誰が管理しているかわからないようなマンションがあれば、地道に全戸の区分所有者にアプローチし、将来的に管理組合の設立まで協力的に担ってもらえる人を見出していきたい。
現状の法律では、管理組合が設置され管理規約を定めていないとマンションを運営していけない。そうした点も含め理解してもらえるようにしたい。それには自治体との連携や民間の関係する主体との協力も推進していく。

――届出を促す仕掛けは。
条例でも、マンションの適切な維持保全や適正な管理の促進に必要な支援ができると規定した。ある種のインセンティブとして機能するかもしれないが、適正な管理を行っているところと不公平感が出ないようにしなければならない。一方で届出という新たな負担をお願いしていることもあり、それを支援する形も不可欠だ。そのバランスを考えたものにしていく。

――条例では、届出のないマンションへの罰則規定は設けていない。その趣旨は。
条例をつくる土台となった「マンションの適正管理促進に関する検討会」でも罰則の有無は議論になった。義務として届出をしてもらうので、届け出ないことでマンション名の公表などの罰則をするのは義務に対して重すぎるのではないか、という意見もあった。また、公表することが逆に管理不全を助長したり、資産価値を棄損することも考えられた。都としては、ペナルティなどで強制するより、助言や支援などを用いながら粘り強くマンションを支え、時間をかけてでも適正な管理を促していく方針だ。現状では管理不全のマンションが如実に増えている状況にはなく、条例もそうならないために予防的・先行的に取り組むことと位置付けている。

――関係する各主体との協力も必要だ。それぞれの果たす役割について。
管理会社やマンション管理士、分譲事業者など民間の関係主体との協力が不可欠だ。とりわけ、マンション管理士の職能拡大が大事になると思っている。法律に基づく国家資格であり、管理について詳しい知識を持ち合わせない管理組合が多い中で専門的な知見で組合へのサポートを期待したい。
管理士には、弁護士や建築士など多様な経歴を持つ人もいる。マンション管理にはハードの知識も必要で、建築技術の知識がある人が資格を取得することは管理士のすそ野を広げることにもなる。建築の分野でマンションの修繕は数あるジャンルのひとつだが、マンションストックが増加していることを積極的にとらえ、将来的に需要の大きい仕事と認識してもらえたらと思う。資格を取ってすぐ仕事を担うことは難しく経験も必要だが、条例を契機に業務の経験を積み、職能の拡大につながれば、管理士としての認知も高まる。
管理会社にも、管理組合からの委託業務を適切に実施し、組合に必要な支援を行ってほしい。管理の質を市場価格に反映させようとする動きがあるが、東京都の優良マンション登録制度も必ずしも登録件数が伸びておらず、テコ入れは課題だ。今後、届出制度とリンクできないか考えていきたい。分譲事業者には、分譲時の原始規約がもとになって管理規約が策定されているので、それが引き継がれていくことを念頭に置いた供給をお願いしたい。

――管理不全の予防だけでなく、高経年化したマンションの再生も必要になる。今後の取り組みをどう展望しているか。
届出制度の対象は1983年の区分所有法改正以前に新築したマンションで、1981年以前の旧耐震マンションとほぼ重なる。届出制度により、旧耐震の耐震状況を現行よりも密度を高くして把握できるようになるだろう。まずは、それにより耐震化の施策を届けていける機会を増やしたい。
マンションの再生は、建替えや長寿命化など複数の選択肢の中から管理組合が意思決定するもの。いくつかの方法を具体的に提示できる支援の仕組みが必要だと思っている。管理組合がないマンションに組合の組成を働き掛けたら、そこでできた関係を生かして次のステップである再生にもつなげていく。条例を通じて一度関係ができても、放っておくとまた元に戻ってしまうので、次のステップにつなげられる体制になるよう検討していきたい。

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