マンション解消制度を提案/日本マンション学会 区分所有の解消で売却、転用を容易に 円滑化法、区分所有法の改正で要件緩和を提起

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日本マンション学会(鎌野邦樹会長)は、マンション解消制度の最終報告をまとめ、5月18~20日に札幌市で開催した学術大会で説明した。老朽化や災害の被災などでマンションの管理不全が進み、周辺環境の悪化につながることが社会問題にもなりつつある中で、建物の解体や敷地売却、用途転用をより柔軟に実施できる仕組みとして提唱。マンション建替え円滑化法や区分所有法の改正により、マンションの〝終わらせ方〟に関する選択肢を増やす。マンションの建替えが立地条件や合意形成の難しさから困難なケースが多く、建物と居住者の「2つの老い」が進み再生への取り組みが難しくなる中、今回の報告は建替え以外のマンションの出口戦略として注目される。

 マンション解消制度は、管理組合が崩壊し再生への合意形成が難しい場合や、建物の劣化が激しく修繕が困難な場合などで再生できないと判断されるマンションの解決手法として提示された。

2014年度から学会内に特別研究委員会(委員長=小林秀樹千葉大学教授)を設置して調査研究や試案の作成などが進められた。今回の大会で小林委員長が最終報告を説明した。

 最終報告では、自主的に解消を進める上での3段階の提案と、自主的な解消が困難な場合に行政による措置を仰ぐ「管理不全マンション改良制度」(仮称)の創設を提唱した。提案の第1段階では、耐震性が不足するマンションに対して5分の4の特別多数決により敷地売却を認めているマンション建替え円滑化法の改正を挙げた。現行では耐震性の不足が適用要件になっていることから、外壁落下や悪臭といった周辺環境への影響、居住者の安全性なども要件に加え、管理不全に陥るマンションにも適用しやすくする。手法も敷地売却だけでなく、大規模改修や用途転用も認める。

 解消までの手続きは、特定行政庁に認定を申請し、認定を受けると5分の4以上の特別多数決で解消を決議する。解消決議では売却代金の配分方法などを決め、買受計画の認定は反対区分所有者への売渡請求までにまとめる。決議後は解消組合を設立し、事業者との交渉などに当たる。

 円滑化法改正を踏まえ、団地型マンションで解消制度を適用する方法を第2段階で示した。全棟が解消要件を満たす場合は団地全体の5分の4以上、各棟の3分の2以上の合意で「団地一括解消決議」を成立させ、解消手続を進める。解消要件を満たさない棟がある場合は、満たさない棟で全員合意ができれば一括解消決議を行い、全員合意できなければ棟別に解消を決議する形に切り替える。棟別に解消を進める場合、接道規制などで敷地分割が難しいケースもあるため、状況に応じて共用持分の譲渡などについて決議する。

 第3段階として、区分所有法の改正による解消制度の創設も提起している。提案では2つの案を併記。1案は区分所有してから50年を客観的要件に定め、それ以降であれば5分の4の特別多数決で解消を決議する案、2案は客観的要件なしで解消を決議する案とした。2案は少数反対者の保護を目的に、解消決議には抵当権者と借家権者の同意を必要としたほか、売渡請求で所有権が移転した後は元の区分所有者が借家権者として一定の期間居住できるとしている。解消が決議された後は円滑化法の手続きを進める。団地型マンションに向け、一括解消決議や棟別解消決議の規定を創設する。

 管理不全マンション改良制度は、戸建住宅を対象とした空家等対策特別措置法に沿った仕組みを想定。管理不全マンションを行政が把握した際は管理組合に対策を助言し、それでも改善がみられない場合に立入調査を実施する。不全度が高ければ「要改善マンション」に認定して区分所有者に通知し、それでも改善がなければ「特定不全マンション」に認定、私権を制限する改善命令を行い、最終的には行政代執行に踏み込む。

 小林委員長は報告の中で、特別多数決の客観的要件のあり方が重要な論点になったと説明した。区分所有法の改正で解消決議を成立させる客観的要件を区分所有後50年以降としたことに触れ「50年の区切りは、定期借地権での設定年数を踏まえ、少数反対者の権利を保護する期間という趣旨で設定したが、建物の寿命と判断される懸念がある」と年数を根拠にすることには課題があることも指摘した。第3段階の提案で2案を並べたのもこうした点で意見集約ができていないためとし、今後の検討課題に据えている。

 また、2003年の区分所有法改正で撤廃された「費用の過分性要件」を解消制度の仕組みとして復活できないか検討したことも明かした。費用の過分性要件は、建物の機能回復に多額の費用が掛かる場合は建替えの要件になるとした規定で、その判断をめぐり建替えを推進する側と反対する側のトラブルを生んだため撤廃されている。小林委員長は「解消制度の場合は修繕費用が一定額を超える場合などと定義すれば要件になるのではという意見もあった」と述べ、解消制度を進める上でのひとつの解釈になる可能性を紹介した。ただ、実態調査が進んでいない点や、トラブルを生むとの意見も強いとし、今後の課題に据えた。

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