マンション管理業協会が「中期事業計画2018-2022」策定 事業の成長発展と従業者の処遇改善がミッション 総合的なマネジメント手法の構築へ、工程表も作成

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 マンション管理業協会は2018年度から2022年度までを対象とした5カ年の「中期事業計画2018-2022」を策定した。マンション管理業は今後急速に進む「少子高齢化と人口減少」や建物と居住者の「二つの老い」、業界の「人手不足」といった事業環境の大きな変化に直面しており、今後を見据えた「ビジネスモデルの転換」が喫緊の課題となっている。こうした状況を踏まえ、今回策定した中期計画では、管理組合と居住者に寄り添う立場である管理会社としてさまざまな社会環境の変化に対応できる「総合マンション管理業」を目指している。

災害発生時の新たな保険制度を組成、認知症高齢者への支援策も

 同協会は昨年夏に開催した役員全員が参加するサマー・カンファレンス(2年前から実施)で、マンション管理業が抱えている課題と施策についてブレストを行った。そのブレストの結果を基に、毎月開いている正副理事長会議で詳細を詰め、内容を整理したものが今回の「中期事業計画2018-2022」である。
 中期計画ではマンション管理業の社会的な意義を、①ハードとしての建物・設備を守る役割、②居住者の生命・安全を守る役割、③居住者の生活を守る役割、という三つの役割に整理。二つのミッションに分けて、それぞれ四つの項目を盛り込んだ。
一つ目のミッションは「マンション管理業の成長発展・社会的評価の向上」に向けた施策で、まず「ハードとしての建物・設備を守る役割」では、日常的な点検業務・保守管理業務のレベルをさらに向上させるとともに、大規模修繕工事等の共用部の工事に関して客観的な透明性をもって工事を受注できる体制を整備する。次に「居住者の生命・安全を守る役割」では、大規模な災害発生時の管理会社の対応を後押しする新たな保険制度の組成を検討する。すでにプロジェクトチームを立ち上げており、早ければ今年6月の総会で制度の内容を決定する。
 「生活総合サービスの約割」では、認知症の高齢者に関して2018年度に、医療や介護・法律・行政福祉部門の協力を得て研究会を発足させ、管理会社を中心とした支援策をまとめる。4項目目の総合的「マネジメント」による推進では、管理会社が三つの役割についての支援業務を全うしていくためには、管理組合・居住者の資産価値および居住価値の維持拡大によりいっそう寄与していく「マネジメント」が求められることから、今後は総合的なマネジメント手法の構築を進めていく。

管理業務主任者を新たな名称へ、外国人労働者の受け入れを検討

 二つ目のミッションは「業界従事者の処遇の改善・社会的評価の確立」に向けた施策。まず「業務標準仕様」の整備による業務の明確化と業務負担の軽減を目指していく。次に、人手不足に対応する生産性向上策を実施する。現場におけるITの活用方策等を検討し、業務の効率化・生産性の向上と顧客満足度の向上を目指すとともに、外国人労働者の受け入れを含む人材確保策を打ち出していく。18年度に、外国人労働者を雇用するにあたっての法制度などを調査するとともに、会員社の雇用意向を明らかにする。外国人労働者に適した職種についても検討する。3番目として、管理業務主任者の新たな資格名称を検討する。19年度に、管理業務主任者の対応業務の範囲や名称の変更等について整理し、その結果を踏まえて管理業務主任者の設置要件や名称変更について関係当局への働きかけを行う。新名称については、深く広いマンション管理業務を担っていくことが一般的に広く理解されるようなものを検討する。4番目として、マンション維持修繕技術者の業務範囲を再検討し、新たな資格名称と公的資格化を目指す。マンション維持修繕技術者には、マンション毎にカスタマイズしたバリューアッププランの提案を行うなど、より実践的な能力を習得させ、されに相応しい資格名称の付与を検討するとともに、公的資格化について国土交通省などに働きかけていく。
 中期計画ではこのほか、計画期間内の各事業年度計画で順次進めていく個別課題として、①コンプライアンス体制の強化・深耕、②建物の高経年化に配慮した安全・安心な空間の提供、③居住者の高齢化等に配慮した、快適に永く住み続けていくための専有部サービスの提供、④防災・減災への取り組み、コミュニティ形成の促進、⑤IT(情報技術)化の促進、⑥「マネジメント」サポート機能の強化、⑦労働生産性の向上を意識した管理業務品質の維持向上、⑧法制度・税制度等への対応、⑨国際化への対応、⑩マンション管理業の広報宣伝活動の促進、協会機能の強化、という10のテーマを設定した。

岡本潮理事長「企業としてのマネジメント力を高めてバリューアップに向かう」

 中期計画の発表会見を行った同協会の岡本潮理事長は、「マンション管理を取り巻く事業環境は非常に厳しい。管理会社は経費増や人手不足などにより経営はますます厳しくなる。管理組合の経営も高齢化の影響などで難しくなってきた。マンション管理業協会の目標は業界と従業者を良くすることである。こうした厳しい状況下であれば、きちんとした中期計画をつくって協会が心を一つにして進んでいかないと目標は達成できない。マンション管理業の社会的意義は、マンションの資産価値を上げることと、マンションに住む居住価値を上げることだと思っている。しかし、この業界はまだバリューアップに向かって動いていない。どちらかというと管理組合から言われたことや組合が望んでいることをつつがなく遂行していく業務になっていて、ひとつの事業としてしっかり確立されているとは言えない部分がある。バリューアップという以上は一つの事業主体としてきちんとマネジメントを行って事業をつくっていくというプロセスが必要。マンション管理の経営主体は管理組合であるが、経営が厳しくなっている組合が多くなっている。そうした組合をサポートしていくためには、企業としてのマネジメント力を高めていくことが非常に大事である。そのことを大きなポイントとして中期計画を策定した。また、計画を絵に描いた餅にしないために一つひとつの課題を実行レベルまでブレークダウンしてこなしていくプロセスと、スケジュールの中で達成する内容を示すことが大事である。また、組織がプロセスを管理して執行していくことも重要であり、そのために具体的な工程表を示している」と述べた。

関敏昭副理事長「マンションの空き家問題に危機感」

 一方、資産価値の維持が難しく、社会から取り残されてしまう可能性のある高経年マンションへの対応をどうするかという質問に対して関敏昭副理事長は「個社で一番危機感を持っているのは空き家問題だ。今後はすごい勢いでマンションの空き家問題が広がっていくと思っている。最近のように駅前のマンションばかりではなく、昔は駅から離れているマンションも多かったのでそういう物件は空き家になる可能性が高いし、相続放棄なども起きてくる。こうした状況は管理組合にとって大きな問題になる。どのように検討していくかも含めて研究していかなければならない。抜本的に解決するためには人口を増やすしかない。外国人の入居を促進している団地もあるようだが、協会としてはまだ議論していない」と答えた。
 岡本理事長は「大量の空き家などで管理が立ち行かなくなるマンションの問題は、小手先の対応では解決できない。社会の構造的な問題になる。社会の大きな力と協力して対応していかなければならない。どうやって対応していくかという答えは簡単には出せないが、個社よりも協会や業界全体で対応していくことがより解決に向かう可能性を開くことになると思う。現場を最もよく知っている業界が果たすべき役割は大きい。」とコメントした。

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