マンション大規模修繕や建替え・解体に向けて新たな制度設計の議論を 富士通総研 経済研究所主席研究員 米山秀隆氏に聞く

コラム/インタビュー

マンションの管理不全は都市のスラム化にもつながる。戸建ての空き家問題に警鐘を鳴らし、将来はマンションについても同様の問題が起きかねないと危惧する富士通総研の米山氏に、マンションの未来と税・補助金のあり方について聞いた。

修繕・建替えに向けた資金の確保が必要

――分譲マンションの将来について。

 米山氏 わが国は人口減少時代に突入している。人口増加時代においては、まち(市街地)を広げ、住宅供給を増やす必要があったが、人口減少が進むと立地条件の悪いところから居住地としての需要は失われていく。需要がなくなれば当然、空き家化していく。現在の空き家問題は戸建住宅が中心だが、将来的にはマンションの空き家問題の深刻化が予想される。総務省の調査は、空き家数を過大にカウントしているとの指摘もあるが、空家対策特措法(以下、空家法)に基づく代執行や略式代執行(所有者不明の際に行われる手続き)による空き家の強制解体は着実に増えている。マンションの場合、築40年を超えると、物件老朽化とともに区分所有者の高齢化が進み、空室化や賃貸化が目立つようになる。それに伴い、管理組合の機能も低下していく。築40年超のマンションは、2016年の約63万戸から36年には5・2倍の約333万戸にまで増える。その中には、管理不全により負の外部性を生じさせるマンションも出てくるだろう。マンションが老朽化した場合の選択肢としては、修繕してできるだけ長く使うか、建替えるか、さもなければ解体のいずれかになる。立地が良く、容積率や敷地の余剰部分を利用して住戸を余計に作って売却するスキームを利用できれば、建替えられる可能性が高いが、そうした条件の良い物件はそもそも少ない。管理組合が機能せず修繕も行われず、建替えも困難な物件は、最終的に解体するしかなくなるが、その費用を誰が負担するのかが問題になる。土地に価値があれば、土地の購入者が解体費用を負担して、新たな土地利用を行う可能性もあるが、そうしたケースも限られる。

――マンション解体・撤去の費用負担について。

 米山氏 戸建空き家を代執行で強制解体する際の費用は所有者に請求されるが、支払ってもらえず、土地を売っても回収できない場合は公費投入となる。所有者不明の空き家の場合は費用の請求もできない。それでも戸建の空き家の場合、解体費は木造であれば戸当たり約150万~200万円程度と、自治体が一時的に立て替えることのできる範囲にある。一方、マンションが危険な状態になった場合の強制解体は、空家法では全室が空室になった場合に可能になるが、現在の相場では解体費用は一戸当たり200万円程度かかり、仮に50戸規模のマンションを解体すれば1億円となる。将来的に、危険な老朽マンションが放置され、区分所有者も解体の責任を果たさないとすると、自治体が強制解体せざるを得ない事態が予想されるが、費用的に自治体が対応できる限界を超えると考えられる。解体費用は、戸建てでもマンションでも一戸当たりの金額はさほど変わらないが、マンションの場合は建物が大きいため全体の費用が嵩む。解体費用を所有者が支払わなければ、戸建て、マンションを問わず、公費投入になるため、所有者が必ず負担する仕組みを作ることが望ましい。

解体費用を確保する管理組合には補助金を

――マンション解体・撤去を所有者が負担する仕組みは。

 米山氏 戸建て、マンションを問わず、購入時に解体費用を一括して徴収するか、税(固定資産税への上乗せなど)によって段階的に徴収するなどの案が考えられる。所有者が解体する際に引き出せる仕組みにすればよい。一方、マンションでは、現在の仕組みの下でも、最終的に解体費用が余るように、修繕積立金を積み立てている例もある。また、定借マンションでは、定借期間終了後、解体して土地を地主に返さなければならないため、解体準備金として戸当たり200万円程度積み立てる計画になっている。こうした実例があることを踏まえれば、今後は、一般のマンションでも解体費用を確保するため、修繕積立金の中で最終的に解体費用が確保される計画を立てたり、定借マンションのように解体準備金を積み立てたりすることを奨励する仕組みにする案も考えられる。この場合、解体費用をあらかじめ確保する努力をしている所有者または管理組合には、補助金を与えるというインセンティブを設けてもよい。

――固定資産税の優遇や積立に対する所得控除はあり得るか。

 米山氏 マンションの修繕積立金に対する所得控除は、導入を考える場合は、戸建住宅との公平性を考える必要がある。戸建住宅の場合、修繕は個人で行っているが、税控除の仕組みがあるわけではない。一方、解体費用の確保にはいくつかのパターンがあるが、私は解体費用が必ず確保されるようにするためには、強制徴収の仕組みの方が望ましいと考えている。あるいは最初に供託する仕組みでもよい。これは戸建て、マンションを問わず、最後の解体時に公費投入がなされないよう、所有者に責任を持たせる仕組みとして設計すべきと考えている。新たな制度を導入する場合、新築物件は当初からその仕組みが導入されることになるが、既存物件の場合は、途中から必要な額が確保されるまで税に上乗せして徴収するなどの方法が考えられる。当初は想定していなかった途中からの導入であることを考慮し、何らかのインセンティブを与えるということも現実には考えられる。いずれにしても、マンションの大規模修繕やその先の解体に向け、新たな制度設計が必要との議論が生じることは好ましいことだと思う。

*プロフィール

米山秀隆(よねやま ひでたか)氏

1986年筑波大学第三学群社会工学類卒業、1989年同大学院経営・政策科学研究科修了。野村総合研究所、富士通総合研究所を経て富士通総研入社(現任)。

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